2022年6月1日水曜日

五月病とジャスミンの花

ご無沙汰しております。
新年のご挨拶以降、世の中の事情に心が乱れ、文章が書けなくなっていました。
少し心が落ち着いてきて、いろいろな角度からの情報も集まってきたので、
また、書きやすいテーマから、少しずつブログを再開したいと思います。

まずは、アイスブレイクをかねて、先日ツイッターで見かけた話題から。

*******
張暁珺@漢方相談員(@xiaojuninjp)さんの5月11日のツイートで、
「5月病でお困り方
 ジャスミン茶を飲んでください!」
というものがありました。

この方は国際中医専門員でいらっしゃるので、
中医学(漢方)の専門用語で説明が続き、
最後に、ジャスミン茶は、
「イライラやため息が多い
 食欲不振など
 ストレスで気の巡りが滞っている
 肝鬱による症状に向いている!」
とまとめています。

これを読んで「ほぉ~ぉ!!」(感嘆)と思いました。

日本では「五月病」という言葉があります。
(どういうわけかこのブログ、海外の方がたくさん読んでくださっているようで、
 こんなマニアックな内容の長文の日本語ブログを
 どういう背景の方が読んでくださっているのか、
 書いている本人がいまいち釈然としておらず。。。
 海外在住の日本人の方が読んでくださっているのか、
 日本に興味を持ってくださっている方が読んでくださっているのか、
 よくわからないのですが、念のため日本のことについて少し説明をしてみます(笑))

私が子供の頃に聞いた話では、
日本では4月に学校が始まったり、就職をしたり、職場でも人事異動があったりと、
生活環境が変わることが多くあります。
4月中は新しい環境になじもうと緊張して頑張るのですが、
5月に入ると、少し慣れてきて気のゆるみと、がんばりすぎた疲れが一気に出て、
体調を崩したり、うつっぽくなったりする人がたくさんいます。
それを称して「五月病」と言うんだよ、と私は聞きました。
だから私はストレスからくる軽度の精神疾患、みたいな感じにとらえていたのです。
心の風邪、みたいな感じ。

一方、私は長年の虚弱体質を漢方や鍼灸治療で改善してきました。
治療を受ける中で東洋医学の考え方を少しばかり理解してきたのですが、
冒頭のツイートで、五月病というものの理解が変わりました。

東洋医学の考え方では、春は「肝」のエネルギーが強くなる季節です。
西洋医学でいう「肝臓」だけでなく、そこに関連するエネルギーの流れとか性質とかも
全部ひっくるめたものが東洋医学でいう「肝」なんですけど、
まぁとりあえずざっくり「肝臓かな?」くらいに思っておいてください。

肝のエネルギー(気)が強くなると、腹が立つんですわ(笑)
怒りのエネルギーなんです。
私が春先に鍼の治療に行って「なんかやたらとイライラします」と言うと、
鍼の先生に「春なんです~」と言われます(笑)
なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、
「春になる」→「肝の気が強くなる」→「怒りの感情が強くなる」
という東洋医学的な見立てです。

逆に「肝の気」と対になっているのが「肺の気」で、
肺の気は、秋になると強くなります。
昔「肺は悲しみの臓器」という言い回しを見たことがありますが
(おそらく「くるねこ大和」さんの漫画で、くるねこさんがかかっている鍼灸の先生の言葉だったように記憶しています)、
秋になって肺の気が強くなると、やたらとめそめそ悲しくなります。
だから「秋はなんだか物悲しい」という日本人のメンタリティは、
気の巡り的に正解。落葉のせいだけではない(笑)

で、また話が脱線しました。
もとに戻すと、
私は「五月病」というものを、
社会的な異動によって生じるストレスが原因の一時的な精神病と理解していたのですが、
先のツイートのもとになっている東洋医学的理解からすると、
季節の変化によって生じる必然的な体調の変化が、大きく振れたもの、
と考えるべき?

上記のツイートの一文、再掲。
「イライラやため息が多い
 食欲不振など
 ストレスで気の巡りが滞っている
 肝鬱による症状に向いている!」

「怒り」ってものすごくエネルギーを消費する感情なので、
私のような「気虚」というエネルギー不足の状態になりやすい性質の人間が、
春になって肝の気が強くなってイライラしだすと、
それだけでエネルギー不足に陥って、ぐったりして鬱になるんです。
イライラ怒りながら、鬱になってぐったりする(笑)
笑い事じゃないんですけどね、辛いんで。
ま、そういう症状にジャスミンが効くよ、ということです。

この方のツイートでは、
中医学では、ジャスミンは
・気の巡りを良くして、鬱を緩和する
・滞った血液のかたまり(瘀血)を流す
・胃腸を健全にする
・精神安定
といった作用があると考えられていると説明しています
(箇条書きの効能は、一般の方にわかりやすい表現になおしています。)

ちょっとなつかしいところでは、昔、杏里が
「ジャスミンティーは~眠り誘う薬~」とか歌っていましたね~(笑)
精神安定作用ですかね。

この5月病の季節ってさ、
外歩いているとジャスミンがこれでもかって咲いているでしょ。
「オサレに庭先にジャスミンを植えてみました」風情を超えて、
なんか野生化して繁茂しているのとか、すごいジャスミンあっちこっちにあるじゃないですか。
あんなにすげー勢いで繁茂して咲きまくっているのに、
なんでジャスミンの精油ってバカ高いんですかね。ちょっと納得いかない(笑)
いや、あっちこっちですごく良い香りで、顔突っ込んで楽しませていただいているんで、
大変ありがたいんですけどね。


ここでハタと気づくわけです。

春になって肝の気が強くなるときに、
その弊害に効くジャスミンがこれでもかと咲きまくって、
良い香りで人々を誘うわけですよ。

自然界って、ちゃんと人間が健全に生きられるように用意してくれている。

むか~し、子供の頃に母に聞きました。
「秋に柿を食べると冬に風邪をひかない」と。
うちの母、とんでもない毒親なんですけど、昔はまともなことも言っていたんです。
「柿 風邪予防」で検索するとこれでもかと出てくると思いますが、
ビタミンCとかβ-カロテンとか豊富みたいです。

きゅうりやトマトといった夏野菜や夏の果物は身体を冷やす作用があるし、
春の山菜など苦みのある野菜は、冬場にためた毒素を排泄する作用があると言われています。

その季節その季節に、
人間の体調の揺れを整える作用のあるものが、
自然界にあふれるのです。


なんかさ、人間って愛されてるなぁ~!!!と、圧倒されるんですよ。

季節の変化によって、体調が揺れるんです、人間は。
それをちゃんと健全な状態に整える作用のあるものを、
自然界が用意してくれているんです。

ジャスミンなんて、クソみたいに咲いているじゃないですか(失礼)。
本当にちょっと手入れが行き届かなくなったお宅とか、空き家とか、
もう収拾つかないくらい野生化して繁茂してますよ、ジャスミンさん。
そんで四方八方にすごく良い香りをまき散らしているんです。
アロマセラピーを例に挙げるまでもなく、
漢方薬も本来は香りも薬効があるものとして味わうべきとしていますし、
その効果あふれる香りを、この季節に、無償奉仕してくれてるんです、ジャスミンさん。
なんて太っ腹!!
なんて太っ腹な自然界!!

まぁもちろん、あっちこっちのジャスミンさんに顔突っ込んでかぐだけじゃなくて、
ジャスミン茶も買いましたけどね、あのツイート読んで。


これだけ用意周到に、健全に生きられるように、
真綿でくるむようにして、
時にあふれるような圧倒的な勢いで、
自然界から愛され、育まれている、私たち人間は。

それなのに、人間界は、一体何をやっているんでしょうか。
なぜ、奪い、挙句の果てには殺してしまう状況を作り出すのか。
(「殺し合う」という表現は不適切で、殺された人間は相手を殺せませんね、もう死んでいるので。家とか国家とか集団で考えるから、殺された本人が見えなくなるんだと思います。「一人を殺さない」と考えることが違う社会を作るための基本のような気がします。)

あふれかえって咲くジャスミンの花に顔を突っ込んで香りをかぐように、
自然界の愛を受け取って、健全に生きる、ということを、
どうしてここまで見失ってしまうんだろう。

私も人間界で生きるのがうまくできない性質なので、
何をどうして良いのかわからず途方に暮れることばかりです。
(でも昨年暮れから社会復帰しました(笑)どこまでやっていけるかはわかりませんが、
また思うこと少しずつ書いていきたいと思います。)
「人間界が苦手」と言っても私は人間として生きていて、
一人で自然界で生きていく術も持たないので、
本当にどうしたものかなと思うばかりです。