2025年7月19日土曜日

静けさと狂騒と、ふわっとした善意

牛田まゆさんと、須藤元気さん。
今回の選挙の国民民主党からの候補者ですが、
あえて「さん」付け。
牛田まゆさんと須藤元気さんの、人としてのことを、
書きたいから。

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しばらく前に、牛田まゆさんが国民民主党から
今回の選挙に立候補すると知って、
ずいぶん嫌な気分になりました。

彼女をそっとしておいてほしかったから。
彼女はそれを望んでいないから立候補したのだろうけど。
社会の良識として、傷ついた人をそっとしておいてほしかったから。

牛田まゆさん、もともとNHKのアナウンサーです。

以前、NHKの教育テレビで「ららら♪クラシック」という
とても良い番組がありました。
ピアニスト加羽沢美濃がクラシック音楽について解説するのを、
作家石田衣良が聞いてわかったようなわからないような返しをしている的な(笑)

スタジオ背景とか構成とか、番組としての絵面は地味だったけど、
加羽沢美濃の音楽解説が、とにかく良い。
この曲のここの部分がこんな風に特徴的で、だからこんなに素敵になっている、
といったことを、実際にピアノを弾きながら解説してくれて、
初心者にもとてもわかりやすく、その曲の魅力がダイレクトにわかる。

番組放送当時、私は
METライブビューイングやROHライブビューイングを
ほぼ毎回観てオペラやクラシック音楽を勉強していたのですが、
METの公演作品を直前に解説してくれることもありました。
ある映画館で隣に座った男性に「よく見にいらしてるのですか?」と尋ねたら、
その方は以前NYでずっと仕事をしていて、METをほとんど毎回観ていたとのこと。
そしてキャスリーン・バトル出演当時ぐらいからのMETほぼ全作を、LPレコードで持っているとか!!!!!
(たまたまキャスリーン・バトルについての解説が挿入されていたので、
その方はそう言ったのですが厳密にいつからのコレクションなのかはわかりません。
キャスリーン・バトル、一定の年齢以上の方は
ニッカウヰスキーのCMでご存知のことと思います。
私もあれを見て憧れました(笑))
いやちょっととんでもねぇ「一財産」持ってんなと思ってビビったんですが、
その方に「私は初心者なので、
NHKの『ららら♪クラシック』を見て勉強しています」と言ったら、
「いや、あれは良い番組ですよ」と仰っていました。
まぁ、そういう精通した方も認める良い番組だったと言いたかったんですが(笑)

で、そんなに良かった番組が、2017年にガラッと改変されて、
とんでもないものになりました。
スタジオ背景がハデになって番組構成がハデになって、
まぁそれはいいとしても、
新しい司会になった高橋克典がとにかくクソ。ただのクズ。
「いや、これはダメだろー!!!」とドン引きしました。

NHK時々特定の芸能人を集中的に出演させることあるけど
(山本耕史とか堺雅人とか)、
高橋克典もそれを当て込んで起用したのかなという感じ。
NHKの時代劇にもその頃出るようになった。
時代劇は知らんが(見てない)「ららら♪クラシック」はお門違いも甚だしい。

私が見たほぼすべての回が最低・最悪なので言い出したらきりがないのだが、
一例をあげると、ラヴェル特集の回がひどかった。
ゲストはNHKのスペイン語講座にも出演しフラメンコも習ってる平岳大
(私めっちゃファン)。
平岳大いい男なんで、なんか競争心に火がついてイキっちゃったんでしょうね。
スペイン系の母親の影響が曲調に現れている、という解説のところで、
「マザコンとか(男として)どうなの?」みたいなこと平さんに言っちゃってんの。
いや、天下のラヴェルですよ???
「なんて返したらいいかわかんなくて平さん困ってんじゃん!!!」と
テレビの前で私は怒り狂った。
天下のラヴェルですよ???

ちなみに、NHK語学番組「旅するフランス語」で
東京バレエ団プリンシパルの柄本弾(『ボレロ』をソロで踊っている)は、
番組内でラヴェルの家を訪問してます(入らせてはもらえなかった)。
「ららら♪クラシック」の後継番組「クラシックTV」では、
ファッション特集の回で、ドン小西がラヴェルのスーツ姿を
「男性ファッションの完成形」「完璧」と激賞。
編曲特集の回で、宮川彬良と清塚信也が
『展覧会の絵』は「この曲をオーケストレーションせよ」との課題のよう、
その課題に100点満点の回答をしたのがラヴェル、と絶賛。
こ・れ・が、ラヴェルの正当な評価でしょうが!!!

まぁそんなんで、開始早々に苦情が多数寄せられたんでしょうね。
牛田まゆさん、その高橋克典と組まされちゃって、
なんか高橋に八つ当たりされちゃってたのね。
牛田まゆさん、当時のNHKアナウンサーにはちょっとめずらしい、
華やかで色っぽいタイプの美人。
いわゆる「いい女系」の美人。
(私はこういう頭よさそうで色っぽい美人が好きなんです。
ちなみに平岳大も頭良くて色気があるタイプ(笑)。
頭良くて色気のある美形が男女問わず私の好み(笑))。
牛田まゆさん、コメディエンヌ向いてないのに
ちょっと笑いを取る系のコーナー持たされてちょっと滑ってるのを
「それまだやるんですか?」とか高橋に言われてんの。
ディレクターに言えよって話じゃん。
番組内でそれ言われて彼女の立場辛くしてどうすんだよ。
共演者ならサポートして番組盛り上げろよクソが。
番組が不評なのは彼女のせいじゃなくてテメェがクズだからだろ。

とかなんとか、怒り狂ってたわけですよ、私は。

彼女あれじゃつぶれちゃうだろうな、と思いつつ、
あんな番組見るのしんどいから見るのやめました。

で、何年かたった後で、
見るともなく目に入ったNHKの昼間の番組に
牛田まゆさんが出ていて、
そのたたずまいはうつ病の人のものでした。

ああ、やっぱりな、としか思えなかった。

一般人より学業優秀で、美人で、華やかな色気があり、ファッションセンスも良くて、
これまで、そうやって一般より秀でているという状態で生きてきて、
当然、人よりも成功するだろうと周囲も本人も思ってきた人が、
高橋のようなクズにつぶされ、
そのことをどうやって消化したらいいかわからなかった。

ただ、人生には、時折そのような降ってわいた不幸がある。
そういうことがない人ももちろんいる。
けど、そういうことは起こることがある。

そうした時、静かに休み、存分に泣き、怒り、自分の痛みを癒し、
再生のための英気を養う時間と場所が必要だと私は思う。
精神科に入院するという形ではなくて。

今、国民民主党からオファーを受けて、喜んで飛びついた。
これで本来なるはずだった「成功者」になれる。
自分のすごさを世の中に示せる。
自分を貶めた高橋克典と助けようともしなかったNHKを見返すことができる。
復讐できる。

そのための、立候補。
世の中を良くするためじゃない。

そういう精神状態の人をかき集めているのが国民民主党。
というか、玉木雄一郎という人の人間性。

牛田まゆさんに限ったことじゃなく、
こういう精神状態の人、日本中にいっぱいいるんです。
そういう混乱した精神状態の人が、
玉木雄一郎、国民民主党に惹きつけられる。
玉木雄一郎本人が「俺はすごいんだ」と誇示したいだけの人なので。
同じ念に縛られている人が吸い寄せられている。

高学歴キャリア女性(しかももともと美人)の奥様に
自分の高齢の両親の世話押し付けて、
その同じ地元で性的魅力アピール全開の女性と浮気するような男を、
まともな人間だったら信用するはずがない

でも、国民民主党も玉木雄一郎も、
恥ずかしげもなく政治活動を続けて、
新たな立候補者もたくさん立てている。

日本中に、玉木雄一郎に同調する精神状態の人が
たくさんいるからですよ。
問題はそっちです。

牛田まゆさんにしろ、玉木雄一郎にしろ、
それに惹きつけられる多くの人たちにしろ、
精神衛生や、(まっとうな)スピリチュアルでは
「ジェットコースター・ドラマ」にはまっている状態と考えます。
「ジェットコースター・ドラマ」っていうのは、
その名の通り、ジェットコースターのように感情の起伏が激しくて
問題の多い人生の状態のことを指します。

激しい性欲にとらわれて不適切な関係を持ったり、
裏切ったり裏切られたり、
憎んだり恨んだり復讐したり、
成功したかと思えば一瞬にして裏切られて引きずり降ろされたり、
といったような状態のことです。
まぁ、オペラとか歌舞伎とか、古典的小説からハリウッド映画まで、
こんなのばっかりですよ。
だから私はオペラも歌舞伎も、高尚な芸術とは思っていません。
音楽とか身体技法とかそういったことには敬意を払いますが、
「あの時代のハリウッド映画」として見ています。
そういう混乱した精神状態のもたらす混乱した物語として見ています。

そういう混乱した精神状態の政治家に権力握らせてどうするんですか。
戦争への一番の近道です。
「俺はすごいんだ」「私はすごいんだ」だけしかないんだから。
ほとんどの人は、はじめから戦争をしたいと思って生まれてきてませんよ。
自分が勉強して成長して「これから大人になってうんと幸せになるんだ」と思っている時に、
「自分はこれから戦争を始めて罪のない人たちを大量に虐殺するんだ」と思っている人は
ほとんどいないはずです。
でも、「俺はすごいんだ私はすごいんだ」というエネルギーで物事を動かそうとしていると、
「金儲けのためなら何をしてもいい」という人たちにからめとられて逃げられなくなり、
自分の過ちを認めて引き下がることもできなくなり、
自分はすごいんだ正しいんだと言い張り続けるために、
「戦争で何もかもぶち壊してしまえ」というところにまで簡単に行きつく。
今の自民党がまさにそう。だから自民党は戦争の準備をする。
大混乱を起こしてしまえば、誰にも自分の過ちを追及されなくなるから。
日本だけじゃなくて、欧米各国、今起こっていることみんな同じじゃないですか。

ただこれ、一朝一夕にどうにもならないと私は感じてしまうんです。
私が悲観的すぎるのかもしれませんが。
薬物依存、ギャンブル依存、セックス依存、アルコール依存、買い物依存、
その他もろもろの依存症と同じ種類の事なので、
そういった依存症の治療にかかるのと同じくらいの時間とエネルギーを要すると
私は思ってしまうのです(私が悲観的過ぎるのかもしれませんが)。

私が「お日様に当たって心と身体を元気にしましょう」とか
「食を安全に確保しましょう」みたいなことを書いていたのは、
こういう不安定な精神状態に陥らないようにするというのが
一番の土台だと思っているから。

不安定な精神状態の人が、
玉木雄一郎に惹きつけられるんですよ。
あんなもん、支持しなきゃお金も権力も何にもないクズで終わる。
でもあの未熟で不安定な精神状態の自己顕示欲に惹きつけられる人が
たくさんいるから注目されて支持される。

ちなみに「今の世の中は間違っている」「世の中を良くしたい」と強く思っていても、
精神的に未熟で混乱を抱えている人は参政党にひっかかります。

正直、国民民主党にひっかかる人と参政党にひっかかる人って、
「世の中を良くしたい」という意識があるかどうかの違いはあっても、
心の中に抱えている混乱の度合いはあんまり変わらない。
どっちも混乱している人をかき集めて世の中を破壊する詐欺だなと思ってます。


牛田まゆさんについての文章が長くなっちゃって、
須藤元気さんのことほとんど書けなくなっちゃったんですが、
少し書いておきます。

須藤元気さん、一番初めの政治参加は立憲民主党でした。
格闘家として名を馳せていた時、
『風の谷のあの人と結婚する方法』という本を出版していた。
読んではいないけど、それだけで、
何を心に抱いてきた人なのかわかった。私も同年代なので。

そして、須藤元気さんが立憲民主党から立候補した時の
立憲民主党の雰囲気も私は覚えているし、
実際、私も何度か立憲民主党に投票しました。

が、立憲民主党も信頼できる人の集まりではないことがわかり、
須藤元気さんも政治的な引き下がり方等、いくつか間違いがあった。
そして、身動きがとれなくなっているところを、
牛田まゆさんと同じく、国民民主党に呼び寄せられた。

国民民主党の磁場に入ってしまえば、
もう、戻れないでしょ、
『風の谷のあの人と結婚する方法』という言葉を
本のタイトルに選んだ精神状態に。

こういう不安定な精神状態の人を、
地獄に引きずり下ろすようなことをしてほしくないんですよ。
人生には失敗も事故もあるので。
失敗したり事故にあったりしたときに、
傷を癒して、何が悪かったんだろう、
どうしたらこういうことにならずにやりたいと思ったことができるんだろう、
と、静かに休んで省み、学ぶための安全な場所と時間が必要なんですよ。
でないと、狂騒状態が狂騒状態を呼び、戦争、虐殺にまっしぐらです。
はじめからそんなことしたい人なんてほとんどいないでしょ、普通。

私は須藤元気さんの
『風の谷のあの人と結婚する方法』という言葉を本のタイトルに選ぶ善良さを、
大切なものだと思っています。
でも、格闘技の世界とは違う種類の厳しさがこの世の中にはいくつもあって、
簡単に転んでしまうこともあるわけじゃないですか。
で、それをあげつらって非難しても仕方ないわけですよ。
ただ、安全(経済的にも社会的にも)に、
しばらく静かにしていた方がいい、というだけで。

政治に詳しい男性に特に多いんだけど、
「ふわっとした善意」をやたらと攻撃する人いるのね。
「そんな甘ったれた考えで何かできると思う奴がおかしい」的な。

そんなこと言い出したら、誰も何にもできなくなるんですよ。
はじめはみんな「ふわっとした善意」から始まるんです。
「世の中に苦しんでいる人がいるのっておかしくない?」
「戦争があるのっておかしくない?」
その程度の「ふわっとした善意」から、みんな始まるんです。

で、大概は「ふわっとした善意」だけで動くと壁にぶち当たる。
その時に、なんでうまくいかなかったんだろう、と考えて調べてまた進む。
その繰り返しじゃないですか、物事は。
その初歩の段階で痛い目にあってしまった人には、
「そういうこともあるから少し休みなさい」と社会が安全を提供する。

そういうことが必要だと考えることもなく、
世の中が「いつも成功していなければいけない」とか、
「はじめから最後までずっと正しくなければいけない」みたいな
不条理を要求するから、みんなおかしくなる。
著名人だけじゃなくて、私たち一人ひとりも。

人生なんて間違って当たり前じゃないですか。
事故だって病気だってありますよ。
誰にでも、静かに休む安全な機会が必要です。

そのことを知って、
心身が疲れた状態の人たちが、
これ以上狂騒状態に引き込まれないようにしないと。