2025年8月11日月曜日

食の話をいくつか ⑤アンチョビとテリーヌ

先日仕込んだアンチョビ、第一弾を食べてみました。

日本ではカタクチイワシほとんど煮干しになってしまっていて
一般にはあまり流通していないので、
マイワシを使ったんですが、デカいんですよ、一切れが。
で、塩漬けにして身が固く締まっているもので、
手抜きして、フライパンの上で木べらで崩したれと思ったら、
木べらなんかじゃ崩れません(笑)。
なので、大きいマイワシで漬ける場合は、
塩漬けの前か油漬けの前に、小さく切り分け、
かつ、調理の際はちゃんと包丁でたたく、
をした方がいいなと思いました。
大きい一切れまんま使ったらしょっぱかった~(笑)

このアンチョビ第一弾、スーパーで一尾80円くらい。
第二弾は別のスーパーで一尾60円くらいだったかな。
それぞれ十何尾か仕込みました。
いや、高くはないんですけど、
「豊漁」というほどには安くないんじゃね???
私、ガセネタつかまされた?とか思ったりもしたんですが、
先日、すごいの見つけちゃいました。
ちょっといろいろ安くて量の多いスーパーで、
ちっさいマイワシ50尾199円也が、
古くなって半額99円(税別)。

いや、もう2回漬けてるし、一人でこんなに仕込むの辛いし、
食べきれないとアレだし、とか悩んだんですけど、
その半額になったイワシ、何パックも残っているのに、
一般家庭の皆様ことごとく素通りしていて(そりゃそうだろ)、
え、これ、明日になったらどうなっちゃうの?廃棄?廃棄?と
心が落ち着かなくなり、
ほんの気持ちばかり、1パックだけ買って漬けてみた。

でもほんと、結構な作業量よ。
ちなみに第一弾と第二弾は開きになっているの買ったんで、
実際の作業は皮はぐぐらいだったんですが、
このちっちゃい50尾は尾頭付きなんで手開きから。
この手の作業って生ごみ出せる日しかできないし(笑)
その日ニトリル手袋も安いの手に入ったんで、
安心して作業しましたが。


で、第一弾油漬けにした時に容器として使ったのが、
アルノーのテリーヌの空きビン。
このアルノーのテリーヌ、今年に入ってから知ったのですが、
中身もビンもめちゃくちゃ優秀。

今手元にある『豚肉・アヒル肉・鶏レバーのテリーヌ』、
原材料「豚ほほ肉、アヒル肉、鶏レバー、牛乳、卵、
食塩、ブランデー、香辛料」以上、ですよ。
すごくないですか。
合成保存料とか化学調味料とか何も書いてないんですよ。

で、『加熱食肉製品(包装後加熱)』と書いてある。
つまり、生のハンバーグみたいなのをビンに入れてフタをして、
その後加熱している。
というかもともとビン詰って、
食品を長期保存して運搬するために開発されたもので、
ビン詰後に加熱するのが本来の作り方のようなのですが。
その結果、今年の1月に買ったこのテリーヌ、
賞味期限が2029年1月。
すごくないですか、いつ作ったのかはわかりませんが、
少なくとも買ったときから4年は持つって。
しかも常温保存。

こんなすごい食品があるんだなと思ってびっくりしました。

単に、店で3個1000円くらいの売り方をしていて、
そういや私レバーって苦手で美味しい食べ方できなかったな~と思い、
ちょっとした興味で買ってみたんです。

貧血になりやすい女性は鉄分を補うためにレバーを食べると良い、とか
滋養強壮に良い、と昔から言われていたので、
虚弱体質だった私は何度か食べようとはしたんですけど、
基本的にレバーって女性の味覚に合ってない気がする。
胃腸が弱いタイプの女性、レバー苦手でしょ。
ニラレバ炒めとか、滋養強壮に良い食材の組み合わせ・調理法ですが、
これって体が強い人しか食べられない料理だと思う。
うっとうしいぐらい(失礼)体強い男性しか食べられない。
体力つけるべき虚弱体質の女性が食べられなくて、
職場で無駄にうるさかったり暑苦しかったりするタイプの男性が
好んで食べるとか、ほんと矛盾してるなと思っていましたが。
まぁ本来は、農作業とか建築作業とか、体力を要する仕事をしていくための
滋養強壮に優れた料理として存在したんだろうと思います。

で、このアルノーのテリーヌはレバー臭くなくて、
女性にも食べやすい味だと思います
(豚レバーのものだけ私は口に合いませんでした)。
クラッカーやパンに乗せて、おしゃれな軽食の雰囲気。
ハーブ飾って、岩塩とかペッパーとかで味整えたら、
友達来た時のお酒のつまみにもいけそう。
ネットでは、フランスパンにアルノーのテリーヌ、コルニッション、マーマレードを
合わせると美味しいと言っている方もいました。

疲れて何にも作りたくないけど、ちょっと動物性たんぱく質補給したいなぁ
みたいなときにあるといいなと思ったし、
常温で長期保存できて
開けたらそのまま食べられる動物性たんぱく質とか
非常食に最適じゃん、と思って、早速買い足してストックしました。

で、このビン、加熱できるビンなので、
空きビンも使い道たくさん。
内容量180㏄でいろいろ使い勝手がいい。しかもフタ付き。
ふつーに小分け容器として冷蔵庫で活躍、以外にも、
まだ試してないけど、オーブンでも大丈夫なら、
これでプリン焼いてフタして冷蔵庫で冷やして、
なんならそのまま外に持っていけるんじゃないか、とか。
私この夏から、ガムシロップも手作りするようになったのですが
(単に鍋に水と砂糖を入れて加熱して砂糖を溶かしただけなんよアレ)、
そんな風に、熱いものをそのまま入れて冷ましてフタして保存、に最適。
前述のブランマンジェとか、ゼリーとかにも良いかと。
型として使って外す場合は使いやすいかわかりませんが。

で、ガラスが割れたり、金属製のフタが傷んだりしたら、
どうせ再利用品だし、と廃棄するにも心が痛まない。

まぁ唯一文句つけるとしたら、
海外の製品ってラベルがはがれないんですよ。
可愛いビンとか缶とか大好きで、
海外のものとかも可愛いの買い集めちゃうんですが、
海外のものはラベルシールがきれいにはがれない。
これだけ何とかしてほしい。
日本のものは、特に最近、缶収集女子向けに、
ラベルシールぺろ~んときれいにはがせるもの多いんですが。
あとちょっと地厚でデカいかな。


なんかねぇ、日本でもこういう製品作ったらいいのになぁと思ったんですよ。
豚のほほ肉は高級部位なんだそうですが(いままでご縁がなかった)、
高価な部位を使うかどうかはともかくとして、
ひき肉状態で調理するものなので、ブロック肉として扱えない肉を集めて、
美味しい味付けにして、無添加のビン詰にする。
で、長期保存食としてストックする。

いや、これまで食についての記事ダラダラ書いてきて、
「金持ちにならないとできないことって何?」
「いつになったら本題出てくるの?」
とお思いかと思いますが。

本来だったら、こういう安全な保存食を作ってストックするのって、
国や地方自治体の仕事だと思うんですが、
日本の政治、壊滅状態なんで。

また別の記事としても書きますが、
日本では調理の仕事って見下されていて、
女性の非正規雇用者や学生バイトがほぼ最低賃金でやっている。
正社員の調理師も「勉強ができない奴が調理師学校に行く」と言われる
社会環境の中でやってきている。
私はそういう環境に「おばさんパート」として入って、
なんか本当に全部致命的に間違っているな、と思った。
おまけに支配人がとんでもないクズで、パワハラ・モラハラにあったんで、
労働基準監督署通して訴訟起こそうとして、
直前でやめ、他の会社に移りました。
ネガティブな戦いをすると私が心を病んでしまうので(これは私の個人的性質)。

まぁ私が被った諸々は今は置いておいて、
食の仕事って、生命の根本でしょ。
農業しかり、調理しかり。
それが見下されてるっておかしいじゃん。
何食べて生きてくの?みんな。

農業・漁業・畜産業の第一次産業が最重要なのはもちろんだけど、
調理は芸術でもあるわけでしょ。
それが「最低賃金のおばさんパートの仕事だ」とか、
「調理師なんて勉強ができない奴がなるもんだ」とか、
根本から間違ってる。
別の記事で書きますが、
食とかケアとか、本当に価値があって生きるのに必要なものを
「価値がない」と言うことで安く、できればタダで奪い取ろうとしているんです。
奴隷がほしいんですよ。
だから、本当に価値があるものを「価値がない」と言い、
本質的に価値がないものを「価値がある」と言う。
竹中平蔵なんか何の価値もないのに、政治に口出して自分の懐に金流し込んで、
まるですごい人であるかのように世の中も本人も思い込んでる。
以前、X(ツイッター)で、
「(学校で)給食しか作ってないおばさんに年収〇百万なんて贅沢だ~」とかいう
男性のポスト見ちゃったんだけど(たぶん引きこもりで一回も働いたことない人)、
社会の未来そのものである子供たちの健康と情操、日々の喜びを担う学校給食なんて、
一番誇りを持てる仕事でなきゃおかしいでしょ。
何言ってんのって話ですよ。

なので、私が大金持ちになってやりたいと思っていたことは、
ずっとおばさんパートとして、社会的底辺扱いされて働いてきた女性に、
年収1,000万円、2,000万円のまともな給与を支払い、調理の仕事をする組織を作る。
あと氷河期世代として男女問わず非正規雇用で苦しみながら働いてきた私の世代も。
私は私自身がこれから先、生きていけるかどうかもわからない身の上なので、
心あるお金持ちの方、そういうお金の使い方もあるなぁ、とご一考いただければ(笑)

それで、冒頭のイワシのように廃棄される可能性のある食材を買い取って、
保存食を作り、国や自治体としてストックする。
アルノーのテリーヌのように、添加物を使わずに安全に保存できる調理法、
レバーのようにクセのあるものも誰でも美味しく食べられる調理法を研究する。
農作物・魚介・畜産物、どんな食品が突然余っても対応できるように、
いろいろな調理法、保存方法を研究しておく。
農産物でも豊作による値崩れを防ぐために出荷せずに畑に漉き込む、
みたいなことを、毎年何かしらかの食材でやっているんですよ。
そういうものを市場価格で買い取って保存食にする。
フリーズドライがいいのか冷凍がいいのか漬物がいいのか、瓶詰・缶詰がいいのか、
いろいろなパターンに対応できるようにする。
そういう組織を作りたい。
本来は国がやるべきだけど。

そういったあらゆる食材の保存食があれば、
災害の多い日本、安全で栄養価の高い食品をすぐに被災地に届けられるし、
生活に困っている家庭に届けることもできるし、
海外で何かあった時に、支援品として送ることもできる。
天候や社会情勢によって、野菜が足りない時には野菜の保存食を、
たんぱく源が足りない時にはたんぱく源の保存食を、
国として放出することができる。

まぁ、国がやらないので、
お金持ちの篤志家としてやりたいなぁと妄想していたわけですが。
妄想・構想の細部について、また折を見て書いていきます。
それはいい考えだから自分がやろうと思ってくれたり、
おもしろいから私と一緒にやりたいと思ってくれる人がいたら、嬉しいから。

2025年7月19日土曜日

静けさと狂騒と、ふわっとした善意

牛田まゆさんと、須藤元気さん。
今回の選挙の国民民主党からの候補者ですが、
あえて「さん」付け。
牛田まゆさんと須藤元気さんの、人としてのことを、
書きたいから。

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しばらく前に、牛田まゆさんが国民民主党から
今回の選挙に立候補すると知って、
ずいぶん嫌な気分になりました。

彼女をそっとしておいてほしかったから。
彼女はそれを望んでいないから立候補したのだろうけど。
社会の良識として、傷ついた人をそっとしておいてほしかったから。

牛田まゆさん、もともとNHKのアナウンサーです。

以前、NHKの教育テレビで「ららら♪クラシック」という
とても良い番組がありました。
ピアニスト加羽沢美濃がクラシック音楽について解説するのを、
作家石田衣良が聞いてわかったようなわからないような返しをしている的な(笑)

スタジオ背景とか構成とか、番組としての絵面は地味だったけど、
加羽沢美濃の音楽解説が、とにかく良い。
この曲のここの部分がこんな風に特徴的で、だからこんなに素敵になっている、
といったことを、実際にピアノを弾きながら解説してくれて、
初心者にもとてもわかりやすく、その曲の魅力がダイレクトにわかる。

番組放送当時、私は
METライブビューイングやROHライブビューイングを
ほぼ毎回観てオペラやクラシック音楽を勉強していたのですが、
METの公演作品を直前に解説してくれることもありました。
ある映画館で隣に座った男性に「よく見にいらしてるのですか?」と尋ねたら、
その方は以前NYでずっと仕事をしていて、METをほとんど毎回観ていたとのこと。
そしてキャスリーン・バトル出演当時ぐらいからのMETほぼ全作を、LPレコードで持っているとか!!!!!
(たまたまキャスリーン・バトルについての解説が挿入されていたので、
その方はそう言ったのですが厳密にいつからのコレクションなのかはわかりません。
キャスリーン・バトル、一定の年齢以上の方は
ニッカウヰスキーのCMでご存知のことと思います。
私もあれを見て憧れました(笑))
いやちょっととんでもねぇ「一財産」持ってんなと思ってビビったんですが、
その方に「私は初心者なので、
NHKの『ららら♪クラシック』を見て勉強しています」と言ったら、
「いや、あれは良い番組ですよ」と仰っていました。
まぁ、そういう精通した方も認める良い番組だったと言いたかったんですが(笑)

で、そんなに良かった番組が、2017年にガラッと改変されて、
とんでもないものになりました。
スタジオ背景がハデになって番組構成がハデになって、
まぁそれはいいとしても、
新しい司会になった高橋克典がとにかくクソ。ただのクズ。
「いや、これはダメだろー!!!」とドン引きしました。

NHK時々特定の芸能人を集中的に出演させることあるけど
(山本耕史とか堺雅人とか)、
高橋克典もそれを当て込んで起用したのかなという感じ。
NHKの時代劇にもその頃出るようになった。
時代劇は知らんが(見てない)「ららら♪クラシック」はお門違いも甚だしい。

私が見たほぼすべての回が最低・最悪なので言い出したらきりがないのだが、
一例をあげると、ラヴェル特集の回がひどかった。
ゲストはNHKのスペイン語講座にも出演しフラメンコも習ってる平岳大
(私めっちゃファン)。
平岳大いい男なんで、なんか競争心に火がついてイキっちゃったんでしょうね。
スペイン系の母親の影響が曲調に現れている、という解説のところで、
「マザコンとか(男として)どうなの?」みたいなこと平さんに言っちゃってんの。
いや、天下のラヴェルですよ???
「なんて返したらいいかわかんなくて平さん困ってんじゃん!!!」と
テレビの前で私は怒り狂った。
天下のラヴェルですよ???

ちなみに、NHK語学番組「旅するフランス語」で
東京バレエ団プリンシパルの柄本弾(『ボレロ』をソロで踊っている)は、
番組内でラヴェルの家を訪問してます(入らせてはもらえなかった)。
「ららら♪クラシック」の後継番組「クラシックTV」では、
ファッション特集の回で、ドン小西がラヴェルのスーツ姿を
「男性ファッションの完成形」「完璧」と激賞。
編曲特集の回で、宮川彬良と清塚信也が
『展覧会の絵』は「この曲をオーケストレーションせよ」との課題のよう、
その課題に100点満点の回答をしたのがラヴェル、と絶賛。
こ・れ・が、ラヴェルの正当な評価でしょうが!!!

まぁそんなんで、開始早々に苦情が多数寄せられたんでしょうね。
牛田まゆさん、その高橋克典と組まされちゃって、
なんか高橋に八つ当たりされちゃってたのね。
牛田まゆさん、当時のNHKアナウンサーにはちょっとめずらしい、
華やかで色っぽいタイプの美人。
いわゆる「いい女系」の美人。
(私はこういう頭よさそうで色っぽい美人が好きなんです。
ちなみに平岳大も頭良くて色気があるタイプ(笑)。
頭良くて色気のある美形が男女問わず私の好み(笑))。
牛田まゆさん、コメディエンヌ向いてないのに
ちょっと笑いを取る系のコーナー持たされてちょっと滑ってるのを
「それまだやるんですか?」とか高橋に言われてんの。
ディレクターに言えよって話じゃん。
番組内でそれ言われて彼女の立場辛くしてどうすんだよ。
共演者ならサポートして番組盛り上げろよクソが。
番組が不評なのは彼女のせいじゃなくてテメェがクズだからだろ。

とかなんとか、怒り狂ってたわけですよ、私は。

彼女あれじゃつぶれちゃうだろうな、と思いつつ、
あんな番組見るのしんどいから見るのやめました。

で、何年かたった後で、
見るともなく目に入ったNHKの昼間の番組に
牛田まゆさんが出ていて、
そのたたずまいはうつ病の人のものでした。

ああ、やっぱりな、としか思えなかった。

一般人より学業優秀で、美人で、華やかな色気があり、ファッションセンスも良くて、
これまで、そうやって一般より秀でているという状態で生きてきて、
当然、人よりも成功するだろうと周囲も本人も思ってきた人が、
高橋のようなクズにつぶされ、
そのことをどうやって消化したらいいかわからなかった。

ただ、人生には、時折そのような降ってわいた不幸がある。
そういうことがない人ももちろんいる。
けど、そういうことは起こることがある。

そうした時、静かに休み、存分に泣き、怒り、自分の痛みを癒し、
再生のための英気を養う時間と場所が必要だと私は思う。
精神科に入院するという形ではなくて。

今、国民民主党からオファーを受けて、喜んで飛びついた。
これで本来なるはずだった「成功者」になれる。
自分のすごさを世の中に示せる。
自分を貶めた高橋克典と助けようともしなかったNHKを見返すことができる。
復讐できる。

そのための、立候補。
世の中を良くするためじゃない。

そういう精神状態の人をかき集めているのが国民民主党。
というか、玉木雄一郎という人の人間性。

牛田まゆさんに限ったことじゃなく、
こういう精神状態の人、日本中にいっぱいいるんです。
そういう混乱した精神状態の人が、
玉木雄一郎、国民民主党に惹きつけられる。
玉木雄一郎本人が「俺はすごいんだ」と誇示したいだけの人なので。
同じ念に縛られている人が吸い寄せられている。

高学歴キャリア女性(しかももともと美人)の奥様に
自分の高齢の両親の世話押し付けて、
その同じ地元で性的魅力アピール全開の女性と浮気するような男を、
まともな人間だったら信用するはずがない

でも、国民民主党も玉木雄一郎も、
恥ずかしげもなく政治活動を続けて、
新たな立候補者もたくさん立てている。

日本中に、玉木雄一郎に同調する精神状態の人が
たくさんいるからですよ。
問題はそっちです。

牛田まゆさんにしろ、玉木雄一郎にしろ、
それに惹きつけられる多くの人たちにしろ、
精神衛生や、(まっとうな)スピリチュアルでは
「ジェットコースター・ドラマ」にはまっている状態と考えます。
「ジェットコースター・ドラマ」っていうのは、
その名の通り、ジェットコースターのように感情の起伏が激しくて
問題の多い人生の状態のことを指します。

激しい性欲にとらわれて不適切な関係を持ったり、
裏切ったり裏切られたり、
憎んだり恨んだり復讐したり、
成功したかと思えば一瞬にして裏切られて引きずり降ろされたり、
といったような状態のことです。
まぁ、オペラとか歌舞伎とか、古典的小説からハリウッド映画まで、
こんなのばっかりですよ。
だから私はオペラも歌舞伎も、高尚な芸術とは思っていません。
音楽とか身体技法とかそういったことには敬意を払いますが、
「あの時代のハリウッド映画」として見ています。
そういう混乱した精神状態のもたらす混乱した物語として見ています。

そういう混乱した精神状態の政治家に権力握らせてどうするんですか。
戦争への一番の近道です。
「俺はすごいんだ」「私はすごいんだ」だけしかないんだから。
ほとんどの人は、はじめから戦争をしたいと思って生まれてきてませんよ。
自分が勉強して成長して「これから大人になってうんと幸せになるんだ」と思っている時に、
「自分はこれから戦争を始めて罪のない人たちを大量に虐殺するんだ」と思っている人は
ほとんどいないはずです。
でも、「俺はすごいんだ私はすごいんだ」というエネルギーで物事を動かそうとしていると、
「金儲けのためなら何をしてもいい」という人たちにからめとられて逃げられなくなり、
自分の過ちを認めて引き下がることもできなくなり、
自分はすごいんだ正しいんだと言い張り続けるために、
「戦争で何もかもぶち壊してしまえ」というところにまで簡単に行きつく。
今の自民党がまさにそう。だから自民党は戦争の準備をする。
大混乱を起こしてしまえば、誰にも自分の過ちを追及されなくなるから。
日本だけじゃなくて、欧米各国、今起こっていることみんな同じじゃないですか。

ただこれ、一朝一夕にどうにもならないと私は感じてしまうんです。
私が悲観的すぎるのかもしれませんが。
薬物依存、ギャンブル依存、セックス依存、アルコール依存、買い物依存、
その他もろもろの依存症と同じ種類の事なので、
そういった依存症の治療にかかるのと同じくらいの時間とエネルギーを要すると
私は思ってしまうのです(私が悲観的過ぎるのかもしれませんが)。

私が「お日様に当たって心と身体を元気にしましょう」とか
「食を安全に確保しましょう」みたいなことを書いていたのは、
こういう不安定な精神状態に陥らないようにするというのが
一番の土台だと思っているから。

不安定な精神状態の人が、
玉木雄一郎に惹きつけられるんですよ。
あんなもん、支持しなきゃお金も権力も何にもないクズで終わる。
でもあの未熟で不安定な精神状態の自己顕示欲に惹きつけられる人が
たくさんいるから注目されて支持される。

ちなみに「今の世の中は間違っている」「世の中を良くしたい」と強く思っていても、
精神的に未熟で混乱を抱えている人は参政党にひっかかります。

正直、国民民主党にひっかかる人と参政党にひっかかる人って、
「世の中を良くしたい」という意識があるかどうかの違いはあっても、
心の中に抱えている混乱の度合いはあんまり変わらない。
どっちも混乱している人をかき集めて世の中を破壊する詐欺だなと思ってます。


牛田まゆさんについての文章が長くなっちゃって、
須藤元気さんのことほとんど書けなくなっちゃったんですが、
少し書いておきます。

須藤元気さん、一番初めの政治参加は立憲民主党でした。
格闘家として名を馳せていた時、
『風の谷のあの人と結婚する方法』という本を出版していた。
読んではいないけど、それだけで、
何を心に抱いてきた人なのかわかった。私も同年代なので。

そして、須藤元気さんが立憲民主党から立候補した時の
立憲民主党の雰囲気も私は覚えているし、
実際、私も何度か立憲民主党に投票しました。

が、立憲民主党も信頼できる人の集まりではないことがわかり、
須藤元気さんも政治的な引き下がり方等、いくつか間違いがあった。
そして、身動きがとれなくなっているところを、
牛田まゆさんと同じく、国民民主党に呼び寄せられた。

国民民主党の磁場に入ってしまえば、
もう、戻れないでしょ、
『風の谷のあの人と結婚する方法』という言葉を
本のタイトルに選んだ精神状態に。

こういう不安定な精神状態の人を、
地獄に引きずり下ろすようなことをしてほしくないんですよ。
人生には失敗も事故もあるので。
失敗したり事故にあったりしたときに、
傷を癒して、何が悪かったんだろう、
どうしたらこういうことにならずにやりたいと思ったことができるんだろう、
と、静かに休んで省み、学ぶための安全な場所と時間が必要なんですよ。
でないと、狂騒状態が狂騒状態を呼び、戦争、虐殺にまっしぐらです。
はじめからそんなことしたい人なんてほとんどいないでしょ、普通。

私は須藤元気さんの
『風の谷のあの人と結婚する方法』という言葉を本のタイトルに選ぶ善良さを、
大切なものだと思っています。
でも、格闘技の世界とは違う種類の厳しさがこの世の中にはいくつもあって、
簡単に転んでしまうこともあるわけじゃないですか。
で、それをあげつらって非難しても仕方ないわけですよ。
ただ、安全(経済的にも社会的にも)に、
しばらく静かにしていた方がいい、というだけで。

政治に詳しい男性に特に多いんだけど、
「ふわっとした善意」をやたらと攻撃する人いるのね。
「そんな甘ったれた考えで何かできると思う奴がおかしい」的な。

そんなこと言い出したら、誰も何にもできなくなるんですよ。
はじめはみんな「ふわっとした善意」から始まるんです。
「世の中に苦しんでいる人がいるのっておかしくない?」
「戦争があるのっておかしくない?」
その程度の「ふわっとした善意」から、みんな始まるんです。

で、大概は「ふわっとした善意」だけで動くと壁にぶち当たる。
その時に、なんでうまくいかなかったんだろう、と考えて調べてまた進む。
その繰り返しじゃないですか、物事は。
その初歩の段階で痛い目にあってしまった人には、
「そういうこともあるから少し休みなさい」と社会が安全を提供する。

そういうことが必要だと考えることもなく、
世の中が「いつも成功していなければいけない」とか、
「はじめから最後までずっと正しくなければいけない」みたいな
不条理を要求するから、みんなおかしくなる。
著名人だけじゃなくて、私たち一人ひとりも。

人生なんて間違って当たり前じゃないですか。
事故だって病気だってありますよ。
誰にでも、静かに休む安全な機会が必要です。

そのことを知って、
心身が疲れた状態の人たちが、
これ以上狂騒状態に引き込まれないようにしないと。

2025年6月19日木曜日

食の話をいくつか ④味噌の諸々2

味噌記事続きです。
友人に教えてもらった味噌づくりで、
味噌以外にも収穫があったので、そのことを。

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味噌を仕込んで寝かせるとき、
カビを予防するために、
味噌の表面に塩を振って
さらに酒粕でフタをするというのが
友人のおすすめでした。
(その上にラップだなんだありますけど)

そうやって仕込むと、
味噌が出来上がるのと同時に
味噌風味の酒粕もできるわけです。

友人はその副産物を味噌汁に入れると美味しいと
言っていましたが、
私は酒粕の入った味噌汁苦手。
それで、魚をつけるのに使ってみました。

サバとかブリとか、
ちょっとくどいんだよね、と思う魚を、
この味噌・酒粕塗りたくって冷蔵庫で寝かせる。
で、軽く洗い流して水気をとって焼く。

も、ごくごく伝統的な日本の美味しさです。
くどさや臭みがとれて食べやすい。
はじめて焼いたときは、
弁当用に一切れ、味見がてら朝食用に一切れ焼いたのですが、
さっぱりして食べやすいもので、
朝から二切れ食べてしまいました。

さらに、スーパーで古くなったアジが安く出ていた時に、
「こういうのも漬けとくといいんじゃね?」と思って
試しに買って漬けてみたのですが、
それも美味しかったです。

アジみたいなさっぱりした魚は、
新鮮な状態で刺身やマリネ、あとは塩焼きが最高ですが、
生食期間を過ぎたものが
「フライに最適」と書かれて売られていて、
さらにそれが古くなって2割引シールついたものに
遭遇してしまいました(笑)

あえて古いもの食えと言いたいわけでもないんですけど、
フードロス的な観点と、経済的な観点と、
「こういうのもうまく美味しく食べられたらいいよね」と思って。

ちなみにこの赤札ついたアジ、
味噌・酒粕に漬けて、
冷蔵庫でさらに数日寝かせましたが問題ありませんでした。

普通の状態だと古くなって廃棄せざるを得ないものを、
この手の調味料に漬けることで延命させることもできるみたいです。

コロナ以降、日本の政治経済の破綻も含め、
いつでも新鮮なものが豊富にお店に並んでいるとは限らない、
ということを痛感するようになりました。
今はあっても、来週どうなってるかわからない、とか。
刺身で食べられるような鮮度でないものでも、
美味しく安全に食べる術を、
少し知っておいた方がいいかもと思うようになりました。

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それから、友人は圧力鍋で大豆を煮ていたのですが、
その威力に驚きました。

味噌作るときの大豆って、
2日間くらい水に浸した後、数時間ゆでるんです。
ゆでている間ほったらかしにしていいかっつーとそんなことはなく、
差し水したり、灰汁とったり、面倒見てあげないといけない。
江上で習ったときは、この工程聞いただけで
「無理でしょ、これ」と思ったものですが、
圧力鍋使うとこれが10分、15分でできてしまう。
(2日間浸水は変わりませんが。)
すごいわ、圧力鍋。知らんかった。

私はずっと玄米も炊ける炊飯器使っていたので、
あんまり圧力鍋の必要性を感じていなかったけど、
これはすごいわ。

彼女とご一緒していたエコロジーカフェのキッチンでは、
豆だの雑穀だのたくさん使っていて、
玄米以外でも圧力鍋大活躍でした。

今って「サラダビーンズ」とか言って
蒸し豆・湯で豆の類、どこのスーパーでも売っているんで、
豆類はそういうもの使っていたんですが、
乾物のままの方がストックはしやすいんだよなぁと
ふと思いました。

前述のとおり、コロナごろから
保存のきく食材、少しストックするようにはしていたのですが、
昨今の日本の壊れ具合を見るに、
もうちょっと本腰入れて自衛しようかなと思わなくもない。
私はずっと経済的弱者なんですが妙に勘が働くところがあって、
米とかも今みたいな事態になる前から
少しストックしていました。

そこへいくと、
乾物としての豆って保存がしやすい。
冷蔵庫に入れずに、袋ごとガサッと常温においておける。
数種類の豆を持っていれば、
それぞれ特徴のある栄養素を確保できる。

長いこと入手困難な「ぬちまーす」とかもそうなんだけど、
健康を保つのに、微量栄養素が結構重要な役割を
果たしているんじゃないかと思うんですよ。
精神的なバランスにも影響あるんじゃないかと思ったりします。

物が流通しない、経済的に買えないって時に、
自分がパニック起こすのが一番しんどいでしょ。
豆とか雑穀とかで、その手の微量栄養素をいろいろ補給できたら、
パニック起こさず乗り越えられるんじゃないかと思ったりします。
味の好みはいろいろあるけど、
食べ物ない時、豆類とりあえず腹膨れるし。

何かが流通しなくなったという時に、
第一波をパニック起こさず乗り越えられれば、
その間にいろいろ調べたり対策立てたりできます。
でもパニックの波にのまれてしまうと、
一番混乱しているときに走り回って
エネルギーもお金も浪費してしまったりする。

まぁ私はうつ病に悩まされた人生を生きてきたので、
こういう考え方をするわけですが。

普段は乾物として楽に保管して、
食べるときは圧力鍋で短時間で調理する。
良くないですか、これ。

というわけで、友人におすすめの圧力鍋を教えてもらい、
今度買うことにしました。
圧力鍋、私が思っていたほど高くなかった。
ちょっと良いフライパンくらい。
必要を感じていなかったから食わず嫌いというか、
「どうせすんごい高いんでしょ」くらいに思って
調べようともしなかった(笑)

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話が危機管理とか非常時対策みたいな
流れになったのでついでなんですが、
水分補給と栄養補給に甘酒のストックをおすすめします。

「甘酒」として売られているもの2種類あって、
①米から日本酒作った時にでる搾りかす(酒粕)から作ったものと、
②米麹と米から作られるものがあります。

①の酒粕甘酒は、アルコールが含まれていて温めるとお酒の香りがします。
 その酒臭さが好みのわかれるところ。私はちょっと苦手(笑)
 (味噌のフタに使った酒粕も同じものです。)

②の麹甘酒は、アルコール分含みません。
 砂糖使っていないのに自然な甘さ。子供も病人も大丈夫。
 麹甘酒は「飲む点滴」といわれるほど栄養豊富で吸収されやすい。

私がストックおすすめするのは②の麹甘酒です。
非常時の水分補給と栄養補給に。
未開封だと数か月常温保存できます(夏のクソ暑い時は冷暗所に)。

特に今の日本の夏、尋常じゃない暑さなので、
冷蔵庫に1本冷やしておいて、
「あれ、熱中症かな?」と思ったときにまず飲むと良いです。
スポーツドリンク・経口補水液の類として。
(必要な医療処置は必ず受けてください。命に関わる暑さです。)

栄養価高いので、
体力落ちている時、食欲ない時、風邪の時とかの
栄養補給にも良いです。

ほっとする自然な甘さなので、
疲れている時にも心が落ち着きます。

マルコメの麹リッチタイプの甘酒と、
八海山のあまさけが美味しいです。
(八海山は高いんですが、ボトルがかわいい。
ボトル再利用したくて何度か買いました(笑))

あと、甘酒の効用についてネットで調べると、
「甘酒はこんなに効用があるので毎日飲みましょう」的な
文章が出てきて、
「飽きずに飲み続けるコツ」みたいなハウツーが続くのですが、
飽きたらやめてください

甘酒に限らず食品なんでもそうなんですが、
体に必要な栄養素が満たされて必要がなくなると「飽きます」。
それ、体が自然にやっている健康管理なんです。
「今体に必要なもの」は「美味しい」、
「もう必要じゃないもの」は「美味しくない」。

美味しいからもっと飲みたいときは、
体が必要としているので飲む。
もう飽きたから飲みたくないときは、
もう体にいらないのでやめる。
それを無理して飲み続けると、逆に害があります。
いままで大丈夫だった食品のアレルギーが出るのって、
こういう食べたくない・飲みたくないのに
頭の理屈で過剰に摂取を続けた場合に発生します。

日本人、「コツコツ続けることは良いことだ」と
刷り込まれすぎているので、
ネット記事でもなんでも「毎日続けましょう」と言えば
きれいにまとまったように感じてしまうのですが、
バカの口癖だと思って無視して、
自分の体を信頼してください。

2025年6月12日木曜日

食の話をいくつか ③味噌の諸々1

友人に味噌を仕込む人がいまして。
私ここ何年か調理の仕事をしていたのですが、
以前の職場の先輩です。
エコロジー界隈ではちょっと有名な店だったので、
何でも自分で作っちゃうような人たちが集まっていました。

昨年その方に誘われて、私も味噌を仕込みました。
すごくよい材料使っているからか、
ちょっとびっくりするくらい美味しくできました。
今年もお声がけいただいて、また仕込みました。

以前江上料理学院に通っていた時も、
単発で味噌の講座受けて1回仕込んだことあったのですが、
初めてだったので、なんかオタオタして終わった記憶があります。

ただその時も、この手の作業って、
「一人でやると作業量が多くてしんどい。
でも、ご近所さんや友達と集まっておしゃべりしながらやると楽しい。」
という類のものだなぁと感じました。

それで昨年、友達と集まってわいわい味噌仕込むの楽しそう!
と思って参加しました。


たぶん、本来は、生きるための作業って
全部そういうふうになっているんじゃないかと思います。

現代の個人の家庭で、「家事」としてやっていると、
孤独でしんどい。
でも、気心のしれた仲間と一緒にやると、
「労働」というより一つの「楽しみ」にもなり得る。

生きることって、本来は楽しくなくちゃやってられない。

「お日様の光」の記事のテーマとも同じなんですが、
実は、日常生活の楽しみを奪って
常に人を欲求不満の状態にしておくことで、
支配することができます。

自分の生活の中で楽しく満たされている人って、
支配できない。

自分の欲求不満を満たすために、
他の人から「すごい」と言われようとして
ブランド物買ったり、整形手術したりしないわけですよ。
勝ち組になろうとして戦ったりもしない。

電車の中でたくさんの人が
スマホでゲームやったり
通販サイトひたすらスクロールしたりしてるの、
欲求不満で何かで満たそうとしているからでしょ。
そういう状態だと、世の中がNISAだと言えば
素人が自分に適性があるのかどうかも考えずに
株買って大損したりする
(適性のある人って何事においてもいるので、
向いてる人は利益あげるでしょうけど。
よっぽど適性があると自負している人じゃない限り、
政府と維新が推進している時点で手を出さないのが
良識ってもんじゃないですかね)。

自分の生活が楽しくて満たされている人って、
広告に踊らされることが少ないわけですよ。
もちろん生活に必要なものは買いますけど。


過去の生活様式の中で、
女性が「嫁」という立場で
奴隷労働をさせられていたというような
ネガティブな要素を排して、
今だったら純粋に楽しくできることって、結構ある。
編み物記事全然書いてないけど、私の編み物もそう(笑)。

私に味噌づくりを教えてくれた彼女は、
以前から味噌の講習をやっていたんだけど、
コロナの自粛期間中はZoom使ってやっていたとのこと。
めっちゃ今どきだなと思いました。
コロナ自粛に限らず、そんなのもありよね。
友達と遠隔でおしゃべりしながら
いろんなもの仕込んだり作ったりするのも、
ほんと「あり」だと思います。


もう一つ、感心したのが、
彼女の人脈で「ふつーのルートでは手に入らない良質な材料」を
用意していただいたこと。
あるんですよ、そういうの、結構。
「一般人は知らない、買えない」っていうもの。
生産者さんも「いつも買ってくれるこの方の分は取り置きして
注文を待っている」みたいなもの。
一般市場に流すほど量がない、とか。

本当にいろいろなものが破壊されてしまっている日本の中で、
それでも個人個人のレベルで、
良いものを作りたい、良いものを維持したいとがんばっている人が、
いろんなジャンルでいる。
そういうのが、個人のコネクションという細い糸でつながって、
メインストリームからは見えない形で
密やかに流通している(別に秘密にしているわけでもないんだけど)。


以前、ネットで「台湾はすべて外食でおふくろの味というものがない」
というのを読んだことがあって、
台湾はよっぽど良い社会なんだろうなぁと思ったことがあります。
食事をすべて外食に頼っても、
健康的で経済的な食事が提供されている、という意味で。
今ネットで調べると、地域と世代と民族とでだいぶ差異があるようで、
完全外食なのは、都市部の共働きの世帯が中心のようです。
(女性の正社員率が98%くらいというのも読んだことがあります。)

かたや日本では、外食に頼ると
あっという間に外食産業の餌食にされてしまう。
自分の子供の頃の記憶をたどっても、
私の親は割と保守的で健康的な食事を意識していたけど、
小学校では人気者の元気な子たちがマックの話をしているので
マックのハンバーガーを食べてみたいなぁと思ってました。
子供っていうのはそういうものなんで、
経済至上主義の外食産業に惑わされるなっつー方が無理なんですよ。

日本の経済が強かったときは、
望めばいくらでも上質なものを食べられたけど、
経済が失墜した今、
コンビニ弁当の新たなメニューとして
ごはんに揚げ玉のっけただけの「揚げ玉弁当」なるものが
発売されたとかいうニュースを見る始末。

社会に基本的な良識とか倫理観がないと、
ひとたび経済が失墜すれば、このありさまですよ。
それに、社会に基本的な良識とか倫理観があれば、
日本経済がここまで失墜するっつーこともないのね。

こんなこともあるので、私は、
食は手放さない方がいいと思っています。
毎日自炊するべきとか言いませんし、
ファストフードもスナック菓子も食べるなとかも言いませんが、
自炊はできた方がいい。
自分を守るために。

お金持ちなら今でも良い食事はできるけど、
コンビニで揚げ玉弁当しか買えない経済状況でも、
自炊手放していなければ、
意外と「抜け道」ってあるんです。
良いものを知っている人脈通じて、
なんだかんだ流れてくるものってあるんです。

ただまぁ、X(ツイッター)でもいつだか言われていましたが、
「自炊ができる」「食材を無駄にしないで使い切れる」っていうのは、
誰にでもできるというものではなく、
それができるということ自体が「立派な文化的資産である」、と。

それから、料理自体はできる人が、
忙しすぎて自炊ができなくなることってあると思うんですが、
そういう状態って2~3年は持ちこたえても、
これから先何十年も続けていける生き方ではないでしょう。
自分の生き方、働き方、これでいいのかな、と見直すための
判断材料にもなると思うんですよね。
もっと大きく言えば、
日本の社会、これでいいのかな、と見直すことにも
つながるとも思います。

ちょっと長くなってきちゃったので、
「自炊ができるという文化的資産」を、
個人的にも社会的にもどうやって作っていこうかって話は、
また別の記事に譲りたいと思います。

あと、友人に教えてもらった味噌づくりで、
味噌以外の収穫もあったので、
味噌記事、もう1回続きます。

2025年4月22日火曜日

食の話をいくつか ②安くて簡単なレシピをちょっと

食について、
概念的なことや長期的な変革が必要なことグダグダ書く前に、
すぐに役に立つ実用的なレシピをちょっとあげておきます。

今、劣化の極みの政治・経済によって、
たくさんの人が倒れてしまう前に、
踏みとどまれる人が一人でも増えるならと思って。


【油揚げとかいわれのサッと煮】
材料
・油揚げ 1枚
・かいわれ菜 1パック
・麵つゆを水で割ったもの 1/2~1カップ

作り方
①油揚げをざるに入れ、熱湯をかけて油抜きする。
②油揚げの長辺を1/4に切ったものを、細い拍子切りにする。
③かいわれ菜を洗い、根本を切り落とし、半分の長さに切る。
④市販の麺つゆ・出汁つゆ等を、「煮物」の分量で水で割る(薄めの方がおいしい)。
⑤油揚げと麺つゆを鍋で煮立たせ、火を弱めて2分ほど煮る。
⑥かいわれ菜を加え、蓋をして軽く蒸し煮にする。


このレシピ、もともとは
オレンジページの『毎日のおかず大全集』に掲載されていた
「油揚げと貝割れ菜の煮びたし」というきちんとしたお料理なのですが、
このレシピ本がもう絶版で紹介できないので、
私が普段作るときの『手抜き版』をご紹介しました。
オリジナルのレシピでは、
油揚げを半分に開いてから切ったり(味を含みやすくなる)、
煮汁も、だし汁とみりん・しょうゆできちんと味付けしています。

見てわかる通り、メインの材料が油揚げとかいわれ菜という、
スーパーでいつも安く手に入るものだけ。
私が買い物する場所だとかいわれ菜は60円くらい。
油揚げは選ぶものによりますが、国産大豆の手作り風が2枚で120円くらい。
麺つゆ・出汁つゆは、今はどこのスーパーでも手に入ります。

10年くらい前に、私は江上料理学院で料理を勉強したのですが、
悪天候で野菜が高くなった時期があって(今ほどじゃないですが)、
「野菜が高くて買えないんだけど、どうしたらいいですか?」
と先生に聞いたら、
「スプラウト類(発芽野菜)は天候関係なく価格が安定しているから、
葉物(レタスとかほうれん草とか)が高い時は
スプラウト類を使うといいよ」
と教えていただきました。
しかも発芽野菜は栄養価も高いとのこと。

ただ、発芽野菜の種って輸入していると思われるので
(もやしの緑豆とか輸入に頼っている)、
日本経済の悪化によって、最終的には
発芽野菜も高くなるんじゃないかなとは思ってます。
ま、とりあえず今を乗り切るために。

食べてみるとわかるのですが、
出汁の優しい風味に、かいわれ菜のピリッとした辛味、油揚げの油の甘味、
と、味のバランスが良くて、疲れている時や食欲がない時でも食べられます。
そして、大豆の植物性たんぱく質と、かいわれ菜の野菜の栄養が両方入っています。
仕事で疲れて悲しくなった時や、朝食欲がない時でも、
私はこれなら食べることができて、
食べると、ほっとして心が落ち着きます。

麺つゆ・出汁つゆはお好みのものを使っていただければよいのですが、
まぁできたら化学調味料入っていないものの方が良いですね。
日本でみんなから拒絶された食用コオロギ、
「『アミノ酸等』の表示で入れればいいだろ」と河野大臣だか言っていたので。
私はミツカンの八方だしが好きだったんですが、
どこのお店でも見かけなくなってしまって
仕方なく他のものいろいろ試していましたが、
今検索したら、ヨドバシドットコムで扱っていました。

ちなみに油揚げは、
味噌汁なら1枚の1/4が1人分と覚えておくと便利です。
私は油揚げを買ったら1/4に切って、
ラップで包んで冷凍しておきます。
で、使う時に解凍と油抜き兼ねて、熱湯をかけます。
この油抜きの作業は、
生産時の油分が時間がたつと劣化して、においが悪くなるから、
と聞いています。
(なので手作りの豆腐屋さんで今日買ってきたものを使う分にはいらないとのこと。)

私はもともと胃腸が弱くて、
ストレスがたまると食べられなくなって
さらに体調が悪化するという悪循環があったので、
疲れたときはこういう優しいものを食べるようにしていますが、
元気な方でしたら、肉料理や魚料理の副菜として
召し上がっていただくとよいかと思います。



【ブランマンジェ】
材料
・牛乳       450㏄
・コーンスターチ  大さじ5
・砂糖       70~80g
・バニラオイル   2~3滴
・アーモンドオイル 2~3滴

作り方
①鍋に砂糖とコーンスターチを入れて混ぜる。
②そこに牛乳を少しずつ加えて分離しないように混ぜる。
③弱火~中火にかけて木べら等で混ぜ続ける。
④数分するとドロッと重くなるので、火からおろし、容器に入れる。
⑤粗熱が冷めたら、冷蔵庫に入れて冷やし固める(2時間ほど)。


ブランマンジェは、牛乳系白いデザートの中で、
一番安上がりで作り方も簡単。
例えばチーズケーキはクリームチーズ、
アイスクリームやパンナコッタは生クリーム、など材料が高い。
ブランマンジェは、牛乳とコーンスターチと、どちらも手に入りやすいお値段。

私は砂糖にてんさい糖を使っていて、
てんさい糖は上白糖やグラニュー糖より甘さが控えめなので、
砂糖の分量多めにしていますが、
使う砂糖と好みによって調整してください。

ただ、デザート(ドルチェ)をあんまり甘さ控えめで作ると、
食べても食べても満たされないので、
ちゃんと甘く作った方が良いです。
和菓子が意外と甘く作られていて、
見た目の地味さのわりに、
食べるとしっかり満足感があります。
その甘さを参考にしてください。

香りづけのバニラオイルとアーモンドオイルについてですが、
一般的な「バニラエッセンス」のように、
「エッセンス」と呼ばれる香料は熱で揮発してしまうので、
このブランマンジェのレシピや焼き菓子に使う場合は、
「オイル」とついている香料を使ってください。

「オイル」の方が少し高いのですが、
よっぽどお菓子作りまくる人でなければ、
1ビン使い切ることはめったにありません。
なので、どうせ買うなら、
冷たいものにも加熱するものにも使える
「オイル」タイプの方が合理的かと。

アーモンドオイルはお好みで、という感じなんですが、
実は、日本で杏仁豆腐の偽物を作るとき、
アーモンドオイルを使います。
日本では本物の杏仁豆腐の原料杏仁霜はあまり流通していないので、
気軽に杏仁豆腐テイストを楽しみたい場合は、
アーモンドオイルの香りづけで代用されます。

牛乳・砂糖・バニラの香りだけだと、味が全部わかってしまうというか、
クリームを使ったパンナコッタよりコクが足りないな、とか
私は物足りなさを感じてしまっていたのですが、
アーモンドオイルを足すと、
「ちょっと何を食べているのかわからない」という感じになって
深みが増します。

冷やし固めるための容器は、
プリン型やグラスのようなものでも良いですし、
大きい容器で固めて、食べるときに取り分けるのでも良いです。

以前、アンスティテュ・フランセのイベントに行った時に、
透明なプラスチックカップに適宜取り分けて
ストロベリーソースをかけたブランマンジェを販売していて、
すごく美味しくて見た目もかわいくて素敵だなぁと思ったことがあります。
家でレシピ調べたら、材料も安くて作り方も簡単。
家にこれが作ってあれば、疲れて甘いもの食べたくなった時も、
寄り道しないで帰ってこれる(笑)。

かけるフルーツソースは何でも良いです。
高いフルーツソース無理して買わなくても、
ごく一般的なジャムでもいいですし、
モナンのシロップ(グレナディン・シロップはお菓子作りの定番)かけてもよし。
ただモナンのシロップは合成着色料使っているので、
どのくらいの量をどの程度の頻度で使うかは、ご自分の判断で。
コンポート作る方なら、それをのせても美味しい。

あと、昨年、かき氷シロップなるものが
スーパーの処分品の棚にあったので試しに買ってみたのですが、
明治屋ブランドの茨城県産メロン使ったものと、
井村屋ブランドの沖縄県産パイナップル使ったものがあって、
いや、かき氷に限らず、ただの万能フルーツシロップじゃね?と思いました。
色付けはどちらも自然なものを使っているし、
くだものとしては流通させられないB級品を加工してるんだろうと思うし、
ものとしては良心的。
ブランマンジェの白い色にもよく映えます。
アイスクリームにかけたり、ヨーグルトにかけたり、レアチーズケーキにかけたり、
使い道いろいろ。
紅茶に入れても美味しかった。

ブランマンジェみたいなベースになるものがあると、
「これも使えるかな」と今まで見向きもしなかったものを
試してみたりできるのでおもしろいです。

で、意外とすごく美味しいものが安くできてしまうので、
疲れて自分を慰めたいときに、
カフェであんまり美味しくないもの我慢して食べるより、
うちで自分が作ったもの食べた方が満たされる、
みたいなことが往々にして発生します。


安くて簡単に作れるもので、
楽に自分をケアすることができたら、
少し生きやすくなるんじゃないかなと思います。

2025年4月19日土曜日

食の話をいくつか ①アンチョビ仕込んでみた

日本では今年、イワシが豊漁とニュースでやっていたので、
ためしにアンチョビを仕込んでみました。

いや、今の日本、諸々の劣化がすさまじくて、
経済状況悪化してみんな生活に困ってるっつーのに、
食べ物うまくさばけなくて捨てたりしてるでしょ。
イワシも大量廃棄とかすんじゃねーの、とニュース見て思ったんですよ。

そーいやアンチョビってイワシだったよなぁ、
買うと高いしなぁと思って、
ネットで調べてみたら、
今って本当になんでも作り方ネットにあるんですね。

私は昭和の人間なので、まぁ昔はレシピが手に入らなくて苦労しました。
なつかしのカフェメニュー的な感じで
今でも愛好者がいる『スパゲティ・ナポリタン』も、
「あれ、ペスカトーレを作りたかったんだけど、
レシピわからないし材料もないしで、ああなっちゃったんだなぁ」と、
大人になってから思いました。
私はトマトケチャップ受け付けないので、
日本のスパゲティ・ナポリタン苦手だったんですが。

アンチョビは仕込んだばっかりで、
うまくできるかどうかもわかないのでレシピ上げませんが、
ネットで検索するといくらでも出てくるので、
興味のある方は調べてみてください。

2か月くらい塩漬けにして、その後イワシだけ油漬けにする、
という段取りのようです。
塩漬けの際に出る水分はナンプラー(魚醤)」として使えるとのこと。

こういう「漬物」って、
一時期に大量に獲れてしまう貴重な食材を、
無駄なく長く使う知恵なんだなぁ、と改めて思いました。
いわゆる「保存食」ですが。

一度にたくさん獲れたからって、毎日イワシだけ食べるとかできないし、
でも、様々な事情で食べるものが乏しい時に、
漬けておいたイワシがあれば、食いつなぐことができる。
イワシに限ったことじゃなくて、野菜でも、肉でも、なんでも。

昔からいろいろな時期を乗り越えるために、
先人たちが食べ物を保存する方法を積み上げてきたのよなぁ、と
改めて思います。

実は私は、割と便利なところにバッタもの扱っている店があるので、
アンチョビ含めよく使う海外の食材、
安く出ているときに少し多めに買ってストックしているのですが、
あんまりそういうことばっかりやっていると、
日本のいろんなもの壊れていく一方だしね…。
そうは言っても生活厳しいしね…みたいなモヤモヤは常にありました。

ニボシ含め、日本の伝統食でもイワシの保存食もちろんありますが、
海外のアンチョビを「高いな~」と思いながらもありがたがって買うなら、
自分で作ってみるのもありよな、と今回思いました。

アンチョビって、王道イタリアンな使い方以外でも、
中華のオイスターソース的な調味料としても使えるのね。
青梗菜が安かったので、
ブロッコリーとアンチョビのパスタを青梗菜で作ってみたら、
おいしいんだけど、なんか中華にも通じるものがあるなと思い、
青梗菜のオイスターソース炒めの代わりに
アンチョビで炒めたらそれもおいしかった。
意外と炒飯とかもいけるかもしれない。にんにく効かせて。


何年か前に、日本で牛乳を大量に廃棄したでしょ。
あれ、本当に悲しかった。
先日の「令和の百姓一揆」でも、
「牛乳飲んでね」ってプラカ(のぼり?)出てたみたい。

牛乳を個人で飲むのはある程度限界あるけど、
もっと保存食をうまく活用できないかなぁとずっと思っていた。
あの時は、バター・チーズといった保存食を作っている業者の
キャパを超えたと聞いているけど、
そういう大手の業者だけでなくて、
もっと小規模でそういうのを吸収できる仕組みがあると
いいのだけど。

たくさんの個人宅で、
「え~、今年イワシ安いの?
じゃあめっちゃアンチョビ漬けとくわ~」ってなったら、
豊漁分のイワシもきれいにはけるじゃん。
それで、漬けておいたアンチョビを時間をかけて
いろいろな食べ方していけば、
その分たんぱく質だの油だの塩分だのを、
長く補給できるじゃん。
アンチョビ漬けることができない人に、おすそ分けすることもできる。
そうしたら無駄も出ないし、
世の中に物がない時に自分が困ることもない。

なんか、そういう仕組みがもっとあったらいいよね、と思う。
いろんな食材に対して。


私は自分が成功してお金持ちになったら
あんなことやりたい、こんなことやりたい、
みたいな妄想を昔からよくしていたのですが、
お金持ちになるのを待ってても
せっかくのアイディアが無駄になると思い始め、
私じゃなくても、できる人がやってくれたらいいな、とか、
私ひとりじゃできなくても一緒にやりたいと思ってくれる人もいるかも、
みたいな気持ちで、そういうのブログに書いてみることにしました。

書きたいことたくさんあるので、
何回かに分けてお伝えします。

2025年4月12日土曜日

怒りのゴジラ

私、ゴジラってどういうわけか好きじゃなかったんですよ。
映画とかあんまり見たくない。
テレビでやっていたのを、1回だけ見たんだけど、
なんかやっぱりゴジラの存在がよくわからなくて。 

で、1年前だか、海外の方がゴジラに関してとても興味深いポストをしていて、
「あ、そういうこと?」ととても腑に落ちたのですが。
曰く、ゴジラは戦争に関する日本人の自責の念の表れである、と。

ゴジラが核爆弾を表している、というのは何度か読んだことがあったのですが、
その方が言うには、第二次世界大戦で核爆弾を落とされるという形で敗戦した日本人が、
こんなひどいことが起こったのは、何か自分たちが悪かったからなのだろう、
という言語化できない罪悪感を抱えていて、
それがあのゴジラという形でもって何度も日本の大衆娯楽の世界に現れている、と。

ゴジラは日本人の自責の念であるがゆえに、
核爆弾を落としたアメリカにやってきて自由の女神やNYの摩天楼を破壊するのではなく、
銀座などの「日本の繁華街」「日本の都市」に現れて、
戦争の苦しみを忘れたかのようなきらびやかな日常を、暴力的に破壊していく。

(元ポストの趣旨は、ゴジラは日本人の言語化できない自責の念の表れなので、
日本人以外の人が、ましてや核爆弾を落としたアメリカ人が、
ゴジラ作品を作るべきではない、というものでしたが。)

この方の解釈、私はとても深く納得しました。
私は母が典型的な毒親だったもので、長い間母に対する罪悪感を植え付けられていて、
それが私の人生を本当にむしばんでいました。
それゆえに、私は「自責の念」を恐れ、
「日本人の自責の念の表れであるゴジラ」をずっと避けていた。


ここ何年か、問題ばかりだった私の家族(両親・兄弟)の諸々と、
もうこれが最後と思って向き合って清算することをしてきたのですが、
典型的な毒親である母だけでなく、
父にも、父の心の中でどうにもこうにも機能していない箇所があって、
それがどういうことか長い間わからずにいました。

で、父の父(私の祖父)が戦時中、海軍の軍曹だったということを、
つい1年ほど前に初めて聞きました。
「それか!」と、父の不可解な心の状態の理由が初めて理解できました。

海軍の軍曹って、一番暴力的。
「じゃぁ大変だったでしょ」と言ったら、「大変だった」と。

父は直接戦争に行く年齢ではなかったけど、
暴力的な軍曹だった祖父に、さんざん苦しめられて育った。

そして、戦後の日本には、その精神的外傷をいやす術がなかった。
父は、自分が何を嫌だと感じていたのか、それがどういう感情だったのか、とか、
そういった部分が石のように固くなって、まったく動かない状態でいる。
言語化もできない。
本当に石のように、血も通わず、動きもしない。


母は母で、戦中戦後の苦労の中で、夏休みなどの長期の休みの時に
口減らしとして決まって一人田舎に送られていた。
兄弟3人いるのに、いつも自分だけが田舎にやられる、と、
母は結婚して家庭を持ってからもずっと苦しみ続けていた。

私の経験上、母は、もとから重度の発達障害であったように思われる。
生活苦の中で、祖母は、母の難しい性質に対処できなかったのだろう。
その当時は、発達障害などという概念も、対処法も存在しなかった。

そして、父と同じく、母の精神的外傷をいやす術もなかった。
両親の世代にあったのは、窓に柵のついた精神病院だけだった。


私はここ数年、スペイン語の歌曲を勉強していて、
その過程で妙なことに気づいた。

ベネズエラの名曲「モリエンド・カフェ(Moliendo Cafe)」、
これ、こっちが死にたくなるほど暗い歌詞なんですが、
日本ではこの曲「コーヒールンバ」として知られています。

私はほとんど邦楽聞かずに育っているので、
実は「コーヒールンバ」も知らなかったのですが、
この日本語版は、
恋を忘れた年老いた男にコーヒーを飲ませたらたちまち若い娘と恋をして幸せになった、
みたいな歌詞。

でも原曲は、コーヒー農園で夜中に恋の痛みに苦しみながら一人コーヒー豆を挽いている、みたいな、救いのない歌詞。

原曲と日本語訳とでこんなに意味が違うよ、という話を父にしたら、
「トロイカ」もそんな風だとのこと。

日本語版の「トロイカ」の歌は
「走れトロイカ今宵は楽しい宴」みたいな歌詞だそうなのだが、
原曲は金持ちに好きな女性を奪われた貧乏な若者の嘆きの歌とのこと
(どっちもよく知らない)。


私は、戦後、日本人は心の傷と向き合うことができなかったんじゃないかな、
と思いました。
もう、苦しいことは見たくない、感じたくない。

だから、暗い歌詞の歌も、全部明るく能天気な歌にしてしまう。
でないと、自分の心の傷が開くから。

戦争が終わった時に、すべての苦しみは終わったんだ。
今はもう、どんどん良くなっていく明るい世の中になったんだ。
暗いことも、悲しいことも、考えなくていいんだ。

そう思いたかった。

戦後の復興と、高度経済成長、バブル経済という右肩上がりの時代が続いた。

自分ががんばりさえすれば豊かになり、
そして多少の虚栄も張って、自分を大きく強く見せて、
勝ちあがっていくことができる、と、日本社会全体が思っていた。

私は10代の頃がバブル経済の時代だったので、
私も大学生・OLになったら、シャネルのバッグを持ってディスコで踊るんだろうと
思っていた。
(その前にクラブブームが来たのとバブルがはじけたのとが重なったけど)


私は、10代の頃から母との軋轢がひどくなって心を病み、
20代以降は、ずっと心と身体の治癒を模索していた。
その過程で、母親が、自己実現を子供に託して子供をつぶしていくパターンを、
たくさんたくさん見ることになった。
私の世代、団塊ジュニアの世代は、引きこもりやうつ病に悩まされた世代だった。
アダルト・チルドレン、インナー・チャイルド、虐待の連鎖、といった言葉が
精神衛生の用語として語られ、
自分の苦しみの源泉はどこにあるのだろう、とたくさんの人たちが模索していた。

実際、私と私の兄弟の人生は、
親の抱えた精神的負債を清算するためだけに消費されたようなものだった。

そういう家族が、日本中いたるところに存在する。

そして、そのことを理解していない家族もたくさん存在する。

私は、20代の前半で、「虐待の連鎖」という言葉を知り、
この連鎖を、私の代で断ち切ると決意した。
でも、そのことすら知らず、
自分の受けた傷を下の代にそのまま流すことをしている人たちが、
日本中にたくさんいる。

例えば、なぜ日本中にパワハラ・モラハラがはびこっているのか?
セクハラもパワハラの一種であることを思えば、
どうして日本中で、自分よりも弱いものを痛めつけて喜ぼうとしている人がいるのか?
吉本のあの芸風、自民党・公明党・維新・国民民主党・立憲民主党・N国・参政党、
諸々の大企業から中小企業に至るまで、
自分が強くなって、自分より下の奴をいたぶってやろうという、
この日本中にはびこっている風潮、これは何なのか、と。

男性の比率がものすごく高いのはもちろんだけれども、
女性でも、嫁姑問題や、毒親のように、
自分よりも弱い立場を作っていたぶろうとする人は存在する。


私は、今、日本がありとあらゆる点で没落の一途をたどっていることを、
悲しく思う。
でも、戦後、日本社会全体が心の傷と向き合うことができないまま築いた経済的繁栄は、
やはり砂上の楼閣だとしか思えない。
バブル経済時代の日本人の浅ましさは、見るに忍びない。
日本の社会が良くなってほしいと切に思うが、
あのバブル経済の時代が再び来てほしいとは思わない。人として恥ずかしい。

心の問題を根本から治療するには、時間がかかる。
そして、本当の叡智がいる。
そのことを認める勇気がいる。